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本をテレビ番組として考える

私は原稿を書く時、全体をテレビ番組として考えて、構成している。これは私が、もともとはテレビ局で原稿を書いていたからだ。

 

私のライターとしての仕事は、中小企業の社長さんやさまざまな小売店の店長さんなどにインタビューして、それを書籍や雑誌の記事にすることが多い。

 

取材される方々はたいてい、現在は何らかの成功をおさめている方で、ここに至るまでに多くの苦難を乗り越えている。彼らの成功と苦労を活字にするのが、私の役目だ。

 

テレビで言えば、「仕事の○○」とか「情熱△△」のような番組を思い浮かべていただければいいと思う。

 

本や雑誌の原稿をテレビ番組として考えるというのは、次のようなことだ。

 

・オープニング=「はじめに」⇒全体の概要をハイライト的に書く。

・番組前半=「第一章」⇒取材対象となっている方が大活躍している様子など。現在どのように成功しているのか。

・番組中盤=「第二章」⇒対象者の過去に戻って、どんな苦労があったのか、転機となったことなどを書く。

・番組後半=「第三章」⇒対象者が目標とすること、これから取り組みたいことなど、未来の話を書く。

 

書籍の場合には数万字、記事の場合には数千字と、ボリュームが違うけれど、おおよそこの流れに沿って書けば、書籍としても、記事としてもまとまった原稿ができる。そのために必要となるのが、取材であり、インタビューだ。

 

書籍も記事も、書き手によって構成は異なる。私の場合は、テレビ局で培った原稿の書き方が、活字のライターとして仕事をする現在でも私のスタイルであり、特徴のひとつになっている。

 

書き手によっては、第一章に対象者の生い立ちを書き、ほぼ時系列で構成する人もいるだろう。私の場合には、テレビのつくり方に慣れているのと、ビジネス系の原稿が多いため、「今、対象者の何が注目されているのか」を先に書くことにしている。

 

それに、取材対象者も読者も「現在」を生きている。だからあえて、対象者の「現在」を先に書く方が、読者がイメージしやすく、伝わりやすいと私は思っている。

 

テレビという映像にしても、書籍や記事という活字にしても、視聴者や読者に何かを伝えることが使命だ。特に活字の場合には、読者の頭の中に映像や画像をイメージしてもらえることが「伝わる」ということだと私は思う。

 

歴史的にみれば、本や雑誌、新聞といった活字の文化の方が、テレビよりもはるかに長くて深いかもしれない。だから、原稿の書き手もそちらの業界出身者の方が多いだろう。しかし、私はテレビ業界出身のライターとして、私なりの書き方を続けていきたいと思っている。