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「ど演歌チラシ」とファンビジネス

ここ数年、「ファンビジネス」とか「応援経済」という言葉が使われるようになった。中小企業や個人店だけではなく、大企業も「ファン」をつくることに躍起になっている。

 

ところが、すでに10年近く前から「自店のファン」という存在に気づいていた方がいる。その方が書いたのが、この本「商いと人生が輝く ど演歌チラシ」なのだ。

ど演歌チラシというのは“店主やスタッフの人生がわかる、体験談を交えた自己紹介文”(本書「はじめに」より)を載せたチラシである。本書の表紙には「あなたの人生、それが最強の売り物です!」というキャッチコピーが記されている。

「チラシに自己紹介文?」と思うかもしれないが、その自己紹介を書くことが、新規客をいきなりその店の「ファン」にしてくれる。その実例と書き方が本書にはたくさん掲載されている。

この本の著者である地域商店コンサルタントの山田文美さんは、人口5800人の過疎地で眼鏡宝石店を営みながら、コンサルタントとして全国を飛び回っている方だ。

私は、山田さんの店にお邪魔してお話しを伺ったことがある。名古屋から電車と車を乗り継いで約2時間半ほどかかる町だ。以前は商店街だったであろう道沿いには、今では山田さんの店と農協くらいしかない。でも、彼女やスタッフを訪ねて、地域の人たちが来店し、しかも定価で眼鏡や宝石を買っていく。

 

私は山田さん自身の店だけではなく、彼女のコンサルティングを受けた店にも伺って、取材したことがある。静岡や新潟など、いずれも県庁所在地ではない街にあり、以前はにぎわっていたであろう地域が、シャッター通りになっていた。そんな中、「山田さんの弟子」にあたる方の店だけが、明るく元気なのである。

 

なぜ、シャッター通りにあっても、その店は元気なのか?

それは「ど演歌チラシ」によって、お客がその店の「ファン」になってくれたからに他ならない。お客が店主やスタッフのファンになれば、その店がどこにあろうとも、ファンはその店から買い物をしてくれる。それだけでなく、本書にあるように「友人知人に熱心にクチコミまでしてくれて」店の良さが広まっていく。

お客がファンになるキッカケとなる、このど演歌チラシには、ちょっとした書き方のコツがある。そのコツは本書に詳しく書いてあるので、ぜひ読んで、そして「ど演歌チラシ」を書いてみていただきたい。

 

「え~?!店のチラシに自己紹介なんて、恥ずかしい!」その思いを捨てることが、地域の個人店にもファンをつくり、店の未来を明るくしてくれるはずだ。