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最寄り駅の向こう側

ひょんなことから、知り合いの家で一緒に飲むことになった。

 

その彼女とは、最寄り駅の近くにあるバルで知り合った。近いところに住んでいるはずなのだが、駅を挟んで反対側に住んでいることもあって、お互いの家を行き来するほどではなかった。

 

その日も、いつものバルで彼女に会った。そして、たまたま話の流れで、女3人で彼女の家にお邪魔することになった。

 

バルを出て、コンビニに立ち寄り、各々が好きな飲み物やらおつまみを買う。すでにバルで軽く飲んでいるから、買い物の時もワイワイにぎやかだ。

 

そして、彼女の住んでいるマンションに向かって歩いている間、私は「こんなに近いのに、こんなに風景が違うのか」と驚いた。

 

私が住んでいる街に限らないと思うが、駅から自分が住んでいる側は毎日のように通っているのに、線路を挟んで反対側には、めったに行かないものだ。

 

私が住んでいる駅の北側は、2階建てのごく普通の住宅やアパートが建ち並ぶ住宅街で、公園や緑が多い。ものすごく庶民的な地域だ。しかし、彼女が住んでいる駅の南側は、敷地の広い豪邸やマンションが建ち並ぶ、高級住宅街だった。もちろん、彼女が住んでいるマンションも大きくて、駐車場には国産車ではなく、高級輸入車がずらりと並んでいた。

 

とはいえ、彼女のマンションでの飲み会は、完全に普通の「女子会」であった。飲んで笑って喋って、楽しくてついつい帰りが遅くなってしまい、結局は泊めてもらうことになった。

 

翌朝、彼女の家を出て自分の家に向かった私は、夜とはまた違う風景に出会った。前日の夜には、暗くて気づかなかったが、高級住宅街のすぐ近くに、小さいながら畑がいくつかあった。その畑の一角に、ひまわりがたくさん咲いていたのである。思わず写真を撮った。

 

線路のあちら側とこちら側。時間にすれば徒歩で20分ほどの距離だが、新しい発見があって、なんだかうれしくなった。秋が近づいて、もう少し涼しくなったら、近場を散策してみよう。

 

「灯台下暗し」というが、身近にあるモノやコトの方が見えにくいことがある。仕事でも、身近なことを改めて見直すと、今まで気づかなかった価値に気づくことができるのかもしれない。