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台風といえば、那覇空港の取材

やっぱり、落ち着かない。

 

画像は、今日28日17時に気象庁が発表した、台風12号の進路予報だ。台風が近づくと、つい情報を追いかけるクセがある。これは、私が沖縄に住んでいたためだと思う。

 

「台風銀座」とも呼ばれる沖縄で生まれ育っている私の友人たちは、学校が休みになる時のワクワク感を思い出して、大人になっても「チムドンドン」とか「チムワサワサ」するのだと言っていた。

 

「チム」というのは沖縄の方言で「肝」つまり、心や気持ちのことだ。「チムドンドン」とか「チムワサワサ」とは、落ち着かなくてドキドキするとか、ワサワサとなんとなく不安な感じを表している。

 

沖縄では台風がある程度近づくと、学校はもちろん、会社も休みになるし、バスなどの公共交通機関も運休となる。一方で、台風の時にかえって忙しくなる職場がある。警察、消防、そしてマスコミだ。

 

以前、沖縄のテレビ局の報道部に勤務していた私は、台風が近づき、那覇空港を発着する飛行機が欠航になることがわかると、カメラマンやカメラアシスタントと一緒に空港へ向かった。ニュースでよく見る、台風時のあの空港カウンターの長蛇の列と、運航の再開を待つ人のインタビューを撮るためである。

 

空港内は風雨にさらされることはないし、空港までは車で行くのだが、カメラマンたちも私も、雨がっぱと長靴、そして何より、カメラにはしっかりと防水のカメラカバーをかけて、台風の装備はバッチリにしていた。

 

何しろ、沖縄にやって来る台風は勢力が強く、風も雨もグルグル回っているので、車を降りてから空港に入るまでのわずかな時間でも、360度、どこからでも雨が入ってくる。もし、カメラに水が入ろうものなら、取材どころではなくなってしまうからだ。

 

空港に着くと、まずカメラマンは必要な映像を撮る。空港内全体、長い列の全体像、列に並ぶ人たち、運行状況を知らせるパネル、それを心配そうに見上げる人たち、カウンターで係員に問い合わせをする人たち…。以前は、「飛行機の運航がいつ再開されるのか」と係員に詰め寄る人も多かったが、近年では「自然災害だから仕方がない」ということを理解してくれる人が増えたのか、詰め寄る人も少なくなったようだ。

 

そして、一通りの撮影が終わると、私の出番だ。運航再開を待つ人にインタビューするのである。目的は「本当に、台風は困りますよね…」「早く帰りたいんですけど…」「明日、仕事なのでどうしても帰らないと…」といった、よくニュースで見るコメントをとることだ。誰にマイクを向けるのかは、カメラマンではなく、私が決めなくてはならない。

 

最初の頃は、闇雲にマイクを向けて、「ああ…」とか「大変ですよ(見ればわかるだろ)」という、ニュースでは「使えない」コメントしかもらえず、ムダな時間を過ごして、カメラマンを怒らせていた。

 

しかし、経験を積むにつれて、空港で待っている人たちの顔を見れば、きちんとコメントをくれそうな人を見分けることができるようになった。また、私自身も、相手からコメントをうまく引き出せるようになった。どんな人がコメントをくれる人で、どうすればきちんとコメントを取れるのか、それは別の機会にまた書きたいと思う。

 

人の性格は、無意識に表情やしぐさに出る。それを客観的に、さり気なく観察していれば、「この人はこんなことをしゃべってくれそうだな」ということがわかる。台風時の那覇空港は、私にとって「チムドンドン」する場でもあったが、人間観察の大切さを教えてくれた、大事な現場だった。