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ライターとコピーライター

「ライターとコピーライターって、どう違うの?」と、聞かれることがある。同じ「ライター」という言葉が使われているし、どちらも言葉に関する仕事なので、よく混同されがちなのだが、実は全然違う。

 

まず、わかりやすい違いは両者の「立場」だ。コピーライターはメーカーなどの当事者の立場として仕事をすることが多く、ライターはメディアなどの第三者として客観的に仕事をすることが多い。

 

また、コピーライターはキャッチコピーのように短い「フレーズ」をメインに考えることが多いが、ライターは比較的長い文章で「ストーリー」を書くことが多い。

 

さらに、私は両者の違いを「現象を巻き起こすのがコピーライター、起きた現象を取材するのがライター」だと思っている。

 

例えば、このアイスキャンデーに「あの夏と、同じ味」というキャッチコピーをつけて売り出したところ、大ヒットしたとする。

 

そのキャッチコピーを考えるのがコピーライターで、「なぜ、このアイスが大ヒットしたのか?」または「このキャッチコピーを考えたあの人!」などを取材するのが、ライターである。

 

この場合、コピーライターが考えた「あの夏と、同じ味」という言葉の中の「あの夏」が何年の夏なのか、「同じ味」だからと言って、昔の原材料などを確認して、本当に全く同じ味なのかを公表する必要はない。あくまでもイメージである。

 

しかし、「なぜ、このアイスが大ヒットしたのか?」または「このキャッチコピーを考えたあの人!」などを取材して原稿を書く場合には、まず「事実」を確認しなくてはいけない。「大ヒット」とは何本売れたのか、この会社の通常の売上の何倍なのか。キャッチコピーを考えた「あの人」とは誰なのか、どこからこの商品のコピーを思い付いたのか…。ライターは、自分のイメージだけで原稿を書くわけにはいかないのだ。そういう意味では、ジャーナリストに近いと思う。

 

だから、コピーライターとライターは仕事の仕方も違う。コピーライターの場合、1つの商品に対していくつものフレーズを考える。広告代理店などでは、野球の「100本ノック」のように、1つの商品から100の言葉を生み出す練習をするといわれている。

 

そのために、原材料や作り方などを把握したり、開発担当者などから話を聞いたりしてリサーチをする。また、出来上がった、もしくは開発中の商品やサービスから受けるイメージを言葉にし、その商品を食べたり使ったりして体験する。そうして、自分の頭の中で独自のコピーを考えることが多いと思う。つまり、自分の想像力やアイデアが勝負だ。

 

一方、ライターは商品やサービスそのものに加えて、それに携わった人や現場を取材することが多い。当事者目線ではなく、あくまでも第三者目線で、関係者にインタビューし、現場の写真を撮り、描写をし、言葉を集めていく。だから、独自の考えというよりも、そこで見たものや聞いたことといった、自分以外の言葉を綴って文章にする。つまり、行動力と観察力が求められるのだ。

 

…と、ここまで書いてみて、自分でも「ああ、そうだったのか」と思う。パッと見は似ているけれど、実は似て非なるもの、ライターとコピーライター。この違いを言葉にできるのは、私自身がライターという当事者だからだ。自分の仕事を明確にするためにも、このテーマについてはまた書こうと思う。