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結婚しないんじゃない、できないんだ。

出会った時はそうでもなかったのに、話をしているうちに「この人、いい人かも」って思う人が、時々いる。

 

私にもいる。そういう人が。

 

その人Aさんとは、よく行く飲み屋のカウンターで会ったのだが、初めて会った時は正直、「地味な人だなぁ」と思った。私は自他共に認めるイケメン好きなので、特にそう思った。

 

何が地味って、まず顔が地味。いわゆる平安顔というか、うりざね顔というか、それに地味なメガネをかけているので、地味さがより際立っている(?)。さらに、服装も地味。平日はワイシャツにグレーのパンツ、休日はなんてことはないTシャツにジーパン。

 

話し方も地味。声も聞き取りにくい。でも、おしゃべりが嫌いなわけではないらしく、話をふると、ちゃんとしゃべる。

 

こういう人って「スルメな感じ」だと私は思っている。なんていうか、初めて食べた時のインパクトは大したことはないのだけれど、噛んでいるうちに味わい深くなっていって、いつの間にか「ああ、また食べたい」と思うみたいな。そういうスルメと同じで、しばらく会わなかったりすると「あれ?どうしたのかな?」なんて気になったりする。

 

んで、先日、久々にその方と飲み屋のカウンターで再会した。その日は週末だったので、他の常連さんたちも何人かいて、飲んでいるうちに、結婚とか恋愛とかの話になった。「飲み屋あるある」である。

 

ある常連さんがAさんに聞いた。「Aさん、40代だよね?結婚してないの?」

Aさん「え?あ、いや~、してないです…」

常連さん「なんで~?バツイチ?」

Aさん「いや、全くの未婚です…」

常連さん「え~、Aさん、いい人なのに~」

Aさん「いや、あの…ボク、結婚したくないんです。親からはうるさく言われてるんですけど…」

常連さん「え?あ、そうなの?でも、付き合ったことくらいはあるんでしょ?」

Aさん「ありますけど…。結婚とかいう話になると、距離を置いちゃいますね…」

 

この会話を耳をダンボにして聞いていた私は、その時は「ちょっと残念…」と思った。心のどこかで「単に付き合うんじゃなくて、結婚するんだったら、こういう穏やかな人がいいんだろうなぁ…」と、思っていたからである。

 

そういう人が、目の前で「結婚したくないんです」と言っているわけだから、今思えば「ちょっと残念」どころか「かなり残念」だと思う。

 

私も40代で、これまでにいろんな恋愛もしたし、結婚の一歩手前までいったこともある。でも結局、今でも独身なので、いろんな人から「選り好みしすぎなんじゃない?」と言われることもある。

 

でも、自分では「選り好みしすぎ」とはこれっぽっちも思っていない。

 

別に、高嶺の花でも何でもないごく普通の人でも、私が「いいかも」と思う人に限って、すでに結婚していたり、フィアンセがいたり、彼女がいたり、離婚して独身なのに子どもがいたり、仕事や趣味が忙しくて結婚どころではなかったりと、何らかの事情で「私とは」結婚できない。そして、極めつけが、今回のAさんである。

 

「結婚したくない」

 

ああ、こんな風に宣言されたら、な~んにもできやしない……。

私はね、Aさんと違って「結婚しない」という選択をしているのではなく、「結婚したいのに、結婚できない」のですよ。あ、でもこれ「今のところは」ですからね。ずっと「結婚できない」わけじゃないからね!

 

ゼッタイに、一生に一度は結婚するんだからっっ!!!