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自分の不安をネタにする

今朝、ツイッターを見ていたら、偶然にも「ムンクの世界 魂を叫ぶひと」(田中正之監修/平凡社)という本が発売されたことを知った。

 

世界的にも超有名な画家、ムンクの作品「叫び」は、おどろおどろしい感じがして、実は私の好きな作品ではない。けれど、この本の帯に「不安を光に変えた画家ムンク」とあったのが、今の私にものすごくズシンときた。

 

調べてみるとムンクという画家は、幼い頃に家族を亡くしたりして、常に「生と死」を考えてきた人で、人生の後半には自ら精神病院に入ったらしい。

 

私はといえば、生とか死とかを考えたのは、沖縄で沖縄戦の取材をしていた頃くらいで、割とあっけらかんと過ごしてきた。だから、「叫び」という作品を見ても、「なんとなく暗くて、おどろおどろしい」くらいにしか思えなかった。

 

でも今日、この本の帯「不安を光に変えた画家」という言葉を見て、なるほど!と合点がいった。

 

私は絵という表現ではなく、文章という表現で仕事をしている。当然のことながら、自分が不安な時には不安なボキャブラリーがものすごくたくさん頭に浮かぶし、ハッピーな時にはハッピーな言葉が浮かぶ。だから、自分がハッピーな時に、無理矢理不安な文章を書こうとしても、ムリがある。また、逆も真なりで、不安な時にハッピーな文章を書こうとしても、なかなか難しい。

 

つまり、その時々の自分の心が、そのまま表現にあらわれる。

 

「叫び」を書いた時のムンクは、どんなに不安だったのだろう。どんなに苦しかったのだろう。不安や苦しさを知らない人には、このような作品は書けないのに違いない。

 

そう思ったら、私も今、自分が経験している不安な状況を書き残すことが、「今しか書けないこと」を記録しておくことになるんじゃないだろうか。……と思って、このブログを書いている。

 

いや、今日も、ものすごくマジメなことを書いてしまったけれど、この本の帯を見た時、「アタシも自分の不安をネタだと思えば、それすらもお金になるかもしれない」と、ヨコシマな考えがアタマをよぎったわけですよ。

 

ライター稼業のアタシには、売るモノがない。売れるのは、自分の人生くらいだからね。