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「知らんけど」の使い方

先日、友人に会うために大阪へ行った時のこと。写真は、その時にいただいたハモの白焼きです。ハモって、いかにも関西の夏の魚、ってイメージがありますよね。

 

ハモを食べた和食料理店の次に、友人の案内で伺ったのが、おもしろいマスターが営んでいるスナックでした。

 

7~8人も入ればいっぱいになるような、カウンター席だけの小さな店。なので、必然的に、店内にいる人たち全員とおしゃべりするような格好になります。そのカウンター席に「さすが大阪」という感じの、ノリのいいオネエサンがいたんです。

 

そのオネエサンが、早口の大阪弁でダダダダダ~ッと何かしゃべった後、「な、せやろ~!知らんけど」って言ったんです!!

 

私、この「知らんけど」をナマで聞いてみたかったんですよ!できれば、自分でも使えるようになりたい!

 

という話をしたら、その時に店にいた人みんなからゲラゲラ笑われました。そりゃそうです。だって、大阪の人はフツーに使ってるんですから。

 

でも、大阪の人がいいなぁ、と思うのは、ゲラゲラ笑った後で、きちんと自分たちの文化について、他県の人もわかるように説明してくれるところなのです。私から見ると「大阪の文化は独特やから、説明しないとわからんかも」ということを、無意識に自覚しているように思います。

 

んで、そのオネエサン曰く「知らんけど」というのは、何かに対して自分の意見を言った後で、それが本当のことなのかどうか、ウラを取っていない時に使える、便利な言葉なのだそうです。

 

私、これを聞いて「ああ、私に足りないのはコレなんだな」と思いました。

 

最近、「ファクトチェック」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。ファクト=事実で、オピニオン=意見という違いがありますよね。でも、これを混同して伝える人、結構多いと思うんです。

 

私は以前、テレビ局の報道部でニュースを取材する仕事をしていたので、これを明確に分けるようにクセづいています。なぜなら、ニュースは基本的にファクトを伝えるメディアだからです。若い頃は、ニュース原稿を書くと「これは、お前の意見なのか?それとも、現場で確認した事実なのか?」と、いつもデスクから注意されていました。

 

インターネットやSNSが普及して、誰もが情報発信できる時代になりましたが、私は今でも、事実と意見を分けて伝えるクセが抜けません。自分で情報発信する時には、できるだけウラが取れているファクトを書くようにしています。

 

だからつい、自分の意見というよりは、客観的な事実を書いてしまう。これって「正しい」んですけど、決して「おもしろい」ではないんですよね。

 

でもね、「知らんけど」を使えば、ウラが取れていなくても、自分のオピニオンとして、なんでも言える気がします。大阪のスナックで、たまたま一緒になったオネエサン、ありがとう!

 

あ、私にとってはそのオネエサンが「さすが大阪」だったのですが、大阪の人にとっては、フツーだったのかも。知らんけど。