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正しい、あたらしい、おもしろい

このところ、ずっと考えていることがあります。

 

それは「正しい」「おもしろい」「新しい」という3つの言葉について。

 

それだけ聞くと「なんのこっちゃ?」と思うでしょうが、まぁ、聞いて(読んで?)ください。

 

たとえば、最初の写真は東京の三軒茶屋と下高井戸という街を結ぶ「世田谷線」という路線を走る「招き猫電車」です。かわいいでしょ。私、この電車が大好きなので、近くを通って見かける度に写真を撮っています。

で、世田谷線は、こんなかわいい電車ばかりが走っているわけではなく(当たり前ですが)、この写真のようにごく普通の電車も走っています。ま、世田谷線は普通の電車もかわいいんですけどね。

 

ちなみに、こちらは世田谷線の三軒茶屋駅で撮影したもの。この駅舎もレンガ造りで屋根が丸くて、レトロな感じがして、ちょっとヨーロッパ風なので、大好きなんです。

 

先ほどの「招き猫電車」は、この普通の電車と…

はい。こちらはまさに「招き猫」ですよね。日本人にとってはなじみのある、伝統的なものだと思うんですけど、この猫さんとごく普通の電車がコラボ(?)して、「招き猫電車」が誕生したわけです。

 

ね、並べてみると、お顔が似てますよね。ホント、かわいい電車です。

 

あ、なぜ世田谷線で「招き猫電車」なのかというと、招き猫発祥の地といわれる「豪徳寺」というお寺が、東京・世田谷区にありまして、そのお寺の最寄り駅が世田谷線「山下駅」と小田急線「豪徳寺駅」なんですね。

 

 

で、こちらが小田急線の豪徳寺駅前にある、招き猫の石像です。結構、大きいんですよ。

 

頭とか手とかがちょっと黒くなっているのは、たくさんの人になでられているからだと思います。ご利益ありそうですもんね。私も、この猫さんの前を通る度になでています。

 

というわけで、世田谷線と「招き猫」はご縁があるんですね。今回の「招き猫電車」は、世田谷線50周年記念として、2019年5月から走っています。

 

あ、実は、この電車は、2017年9月「玉電(世田谷線の前身)開通110周年記念イベント」で初登場。2018年3月まで運行されていました。詳しくは乗り物ニュースさんの記事をどうぞ。

 

で、冒頭の「正しい、おもしろい、あたらしい」という3つの言葉のことなんですが。はい。ようやく戻りました、話が。

 

私は「招き猫電車」を初めて見た時に「おお~!なんてかわいくて斬新な電車!」と思ったんですね。以前、どこかの幼稚園の送迎バスがネコやイヌになっていて、それも「かわいい!」と思いましたけど、それ以上に電車が招き猫って、あたらしいし、他にはないですよね。

 

一方で、「電車」も「招き猫」も、昔からあるものなわけです。

 

昔からあるものを2つ足したら、他にはない、あたらしいものができた。実際に、こんなかわいい電車は世田谷線でしか走っていないので、結構遠くからも、わざわざこの電車に乗るために来る人がいるみたいです。

 

だけど、いくら記念事業とはいえ、電車全体を塗り替えるって、かなりコストがかかると思うんですよ。世田谷線を運営しているのは東急電鉄さんなので、そりゃ大きな会社さんですけれども、世田谷線そのものは儲かる路線ではないと思うんです。線路が短いですし、そんなに乗降客が多いわけでもないですから。

 

だから、普通の電車を「招き猫電車」にするのは、経営的には正しいことかというと、そうじゃないかもしれません。

 

だけど、電車を招き猫にするって、あたらしいし、おもしろいですよね!

 

わざわざ遠くから、この電車に乗るためにお客さんが来てくれているから、まさにこの電車が「招き猫」になってくれていると思います。コストはかかったけど、結果的には「正しかった」っていうことなんじゃないでしょうか。

 

この招き猫電車みたいに、あたらしいこととか、おもしろいことって、一見すると「それって、正しいの?」って思うこともあると思うんですね。だけど、これは個人的な意見ですけど、人って「正しいこと」よりも「おもしろいこと」に集まるんじゃないでしょうか。

 

なんで、こんなことを書きたくなったかというと、私は以前、ニュースの取材をしていたからです。ニュースは、いつでも「正しいこと」を書かなければいけなかった。それがニュースですから。

 

だけど、「正しいこと」は必ずしも「おもしろいこと」とイコールではないんです。おもしろいことというのには、誇張とか、妄想とか、ウソも含まれている。ドラマだって、映画だって、そうでしょ?

 

ニュースの記者ではなく、ライターとなった私は、このところ「おもしろいって、なんだろう?」と考えています。いろんな企業やいろんな人を取材して、基本的にはノンフィクションの原稿を書いていますが、ニュース原稿と違って、おもしろくないと読んでもらえない。だからこそ、「正しい、あたらしい、おもしろい」を考えているんです。

 

ああ、答えはなかなか出ないけれど、たのしい。