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ウケて、ながす

今、とある方の自費出版本をお手伝いしています。その方が仰ったことを、私が文章にする、いわば、ゴーストライターの仕事です。

 

出版社がお金を出して、時には企画も出して、著者さんに書いてもらうのは「商業出版」といいいます。この場合は、出版社が費用を出しているので、「売れる本」をつくることが大前提です。そうしないと、出版社に利益が入りませんからね。

 

それとは違い、自費出版は、著者さんご本人が「書きたい」と思う内容があるから、自分で費用を出して出版する本。極端なことをいえば、本そのものは売れようが売れまいが関係なくて、著者さんが書きたい内容を「本」という形にすることが目的です。

 

本という形になると、読者は「おお~!この人は本を出版するような、すごい人なんだな」と思ってくれるので、信用度が高まります。だから、出版することでブランディングになるんですね。

 

今回、私がお手伝いしている著者さんは、ちょっと変わった方です。自費出版なので、「書きたい!」という内容があるにはあるのですが、その内容がブレまくる。ブレる理由は、まだ書いている途中の原稿を、いろんな人に見せて、いろんな意見を聞いてくるからです。

 

「○○さんからこう言われた」「信用できる△△さんがこう言っていた」ということを、いちいち書面にして、私に郵送してくるものですから、ほとほと困っています。(あ、そうそう。その方はメールが使えないので、資料などのやり取りはすべて郵送なんです。)

 

だから、私は打ち合わせの時にこうお伝えするんです。

「この本は、○○さんとか、△△さんの本ではありませんよね?ご自身は、何を書きたくて、自費出版なさるんですか?」

 

そりゃ、いろんな人に聞いたら、いろんな意見が出ますよ。だって、それは「自分のことじゃない」んですから。

 

そのいろんな意見をいちいち受け入れて本を書いていたら、スジがブレまくって、ものすごくわかりにくい本になります。それは「いろんな人の意見が入った本」であって「あなたの本」じゃなくなるでしょ?それって、自費出版の意味がありませんよね?

 

せっかく高いお金をかけて、自費出版するんですから、出来上がるまでの間にいろんな人から意見を聞きたくなるのも、わかります。でも、それはおそらく、ご自身が書きたいと思っている内容に自信がないからです。だから、「これでいいのかな…」と不安になって、いろんな人から意見を聞きたくなるんです。

 

他人が言った意見を受け入れてつくったものは、「だって、○○さんがこう言ったんだもん。だから、ボクはこうしたんだもん」って、言い訳ができますからね。

 

本というのは、少なくとも自費出版本は、誰かの意見をまとめたものではありません。自分でお金を出して、自分が言いたいことをまとめるものです。

 

誰かに何かを言われても、「ああ、そうだねぇ。そういう意見はおもしろいね」と、ウケて、そしてサラッとながす。そういう姿勢が必要です。

 

たとえば、水は空気よりも抵抗がありますが、体の大きなジンベエザメは水の中を悠々と泳ぎます。ドンと構えて(?)まっすぐ進むから、大きな体でも抵抗力のある水に負けずに、行きたい場所へたどり着くことができるのです。

 

著者さん自身がブレてどうするんですかっ!誰かに何かを言われても、本がきちんと完成するまでは「ウケて、ながす」これでいきましょう。本が完成したら、どんなにキツイ意見を言っていた人でも「すごいね!」と言ってくれますよ。