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同じ場所で同じものを見ていても

先日、東京駅の目の前にある丸ビルの中で、居心地のいいカフェを見つけました。

窓側の席に座れば、目の前に美しい東京駅舎を眺めながらコーヒーを飲むことができます。

これは、東京駅舎にフォーカスして撮った写真です。

一方、こちらはコーヒーにフォーカスした写真。

このカフェ、もちろんコーヒーもおいしかったんですよ。豆にもこだわっていて、数種類から選べるし、淹れ方はハンドドリップやフレンチプレス、またはマシンを使ったりと、いくつかの方法から選ぶことができます。

私は、季節のブレンドをハンドドリップで淹れてもらいました。

 

ところで、上の写真と下の写真、どちらも同じ店でほぼ同じ時間に、同じアングルで撮りました。

でも、どちらにフォーカスするかで、全くイメージが違いますよね。これって、文章もそうだなと思うんです。

 

実際に、同じ店で同じ時間に撮った写真についての説明なのに、上の文章と下の文章では全然違いますよね。

上の写真についての説明は、東京駅舎が見えるというこの店の場所や眺めのよさについて書いています。

一方で、下の写真についての説明は、この店のコーヒーについて書いています。

 

なにが言いたいのかというと、同じ場所、同じ時間に一緒にいた人がいたとしても、それぞれに見ていることや感じていることは違うんです。たとえば、同じ映画を一緒に見ても、感想はそれぞれ違いますよね。

 

以前、とある研修の講師を務めたときのこと。その研修の受講生たちは20人程度集まって、さまざまな研修を受けていました。私が受け持った講座では、それまでの研修の中で最も印象に残っているものをピックアップして、その感想を書いて発表する、というものでした。

 

その中で、受講生からこんな質問が出ました。

「みんなと話をしたら、印象に残っている研修がほぼ同じだったんですけど、いいんですか?」

もちろん、私は「いいですよ」と答えました。みんなが同じ研修をピックアップしたとしても、感想はゼッタイに同じにはならないからです。

 

人は、どんなに同じシチュエーションにいても、同じ人から話を聞いても、受け取り方はそれぞれです。なぜなら、ひとりひとりが違う人間だからです。だからこそ、自分の気持ちや感想を言葉で伝える必要があります。自分の気持ちや感想は、自分にしかわからないから。

 

言葉は、自分の中身を他人に伝える手段です。普段からSNSなどで、自分の気持ちや状況を言葉にする練習をしておくと、きっと役に立つことがあると思います。