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ユーモアあふれる禅画に見る「伝える」ということ

こちらのポスターになってる絵、なんの動物に見えますか?

 

実は「虎」なんです。江戸時代後期の禅僧、仙厓さんが描いたユーモアあふれる禅画。その禅画を集めた展覧会を見てきました。

会場は文京区目白台にある永青文庫。肥後細川家の庭園に隣接する美術館です。細川家の16代当主の方が、禅画をはじめとする美術品のコレクターだったのだそうです。

展示会場内は撮影禁止なので、どんな作品があるのか、詳しくご紹介することはできませんが、とにかくいずれも、いわゆる「ヘタウマ」な感じで味があり、クスッと(もしくはゲラゲラ)笑えるおもしろさでした。

 

会場では、図録は販売されていませんでした。その代わり、この文庫の季刊誌「永青文庫」の中に仙厓さんのコレクションが掲載されていました。

 

季刊誌の中では、仙厓さん研究の第一人者で、現在は福岡市美術館総館長の中山喜一朗氏が『永青文庫の仙厓コレクション 「野雪隠」から「ぼうぶら」まで』というタイトルで解説を寄せているので、一部を引用しますね。

<中山喜一朗氏の解説文より抜粋>

「禅画を描く意味」

(中略)仙厓はなぜ絵画を描くのか、描い てどうするのかという自らへの問いに答えを見いだした。それが七三歳で標榜した「厓画無法」である。

 世間の絵画は美人のごとく、人に笑われ るのを憎むが、自分の絵画は戯れ者のごと く、人に笑われるのを愛するとも公言して いる。画面を見る人と自分が、共に笑い合うことで交わり、自由な境涯、おおげさに いえば、悟りの境地を共有することこそ、 自分が絵画を描く目的だと確信した。本来、 禅は笑いと緊密な宗教である。禅の中心核 に笑いが存在するといっても過言ではない。禅の笑いを顕現するために、仙厓は絵画として美しく見えることを捨てた。それが「厓画無法」である。

 

仙厓和尚さん、実はすごいいろんなことを考えて、こうしたユーモアたっぷりの禅画を描いていらっしゃったんですね。この解説を読んでいなかったら、単に「おもしろい展覧会だったなぁ」で終わっていたと思うので、この季刊誌を買ってきて、本当によかったと思いました。

 

 

私たちライターは、文章を書くことを生業としています。文章も絵画と同じように「きれい」とか「うまい」とか「整っている」ということが「人に伝わる」こととイコールではありません。

 

実は、私がこの展覧会を見に来たのは、自分の文章の表現にユーモアが足りないと思ったからなんです。そういう意味でも、この仙厓和尚さんの作品を見に来て、そして中山先生の解説に出会ってよかったと思います。

 

文京区目白台の永青文庫で開催中の「仙厓ワールド~また来て笑って!仙厓さんのZen Zen 禅画~」は、7月18日(月・祝)まで。ぜひ、足を運んでみてくださいね。