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インタビューはリラックスから

少し前のことですが、私にしては珍しく、夜の取材がありました。

 

「夜の取材」といっても、あやしい取材ではありません(笑)。とあるお店の店主さんからお話をうかがう取材で、そのお店の閉店後にお邪魔しました。この写真は、その取材の帰りに撮った夜桜です。

 

その取材は、とある雑誌に掲載するためのインタビューでした。普段、私はひとりで取材に行くことが多いのですが、これまた私にしては珍しく、その日は5人以上の大所帯。その雑誌の編集担当さんやマーケティング担当の方、もちろんカメラマンさんも同行していたからです。

 

カメラマンさんによる写真撮影もインタビューも滞りなく済んで、気づけば21時くらい。打ち上げなどがあるわけでもなく、解散となりました。

 

そして、数日後。取材をご一緒した編集担当さん(おそらく30代)からメールが届いたのですが、それには「とても素敵なインタビューでした。私にとっては勉強にもなりました」ということが書いてあったんです。

 

私としてはごく普通に仕事をしただけなので、何がそんなに「勉強になった」のかはわかりません。けれども、あの日の取材を思い出すと、ちょっと思い当たることがあります。

 

それは、インタビューをするときの「姿勢」です。あ、姿勢といっても背筋を伸ばすとか、そういう姿勢ではなくて、心構えや態度のことです。

 

前述のように、この取材は私を含めたスタッフが5人以上も取材先であるお店にお邪魔しています。店内は広かったので圧迫感はありませんでしたが、それでも複数人が「取材」という特殊なことをするために自分の店に来るというのは、店主さんにとってはきっと緊張することだと思うんですね。

 

取材時は、先に写真撮影をしてからインタビューという流れでした。写真撮影していたとき、店主さんの緊張感が伝わってきました。

 

なので私は、インタビューに入るとき、あえてもうすでに知っていることを改めて聞きました。「確認なんですが……」という感じで、そのお店のホームページに載っているような内容を質問したのです。あえて、ゆっくりと聞きました。

 

私「ええっと、確認なんですが……。こちらは○○年にオープンしたお店で合ってますか?」

店主「はい、そうです。○○年に創業で、今年で△△年になります」

私「ああ、なるほど~。それじゃ、地元の方に愛されてるんですね~」

店主「そうなんですよ~。お客さまはみんなおなじみさんで……」

という感じです。

 

もうすでに知っていることなら、あえて質問しないでもいいんじゃないかと思うかもしれません。でも、最初にこういう基本的なことを聞くことの目的は「相手にリラックスしてもらうこと」なんです。

 

時間がないからと、単刀直入に聞きたいことだけをいきなり聞いても、相手はこちらが思うように答えてはくれません。なぜなら、緊張しているからです。

 

人は緊張していると、思うように言葉が出てこなくなります。みなさんも、きっと経験がありますよね?普段はペラペラしゃべっているのに、緊張する場面ではうまくしゃべれない……。

 

だから、インタビューの最初にやることは、相手にリラックスしてもらうこと。お店の基本情報じゃなくても、お天気のこととか、相手と何か共通点(例えば同じ地方出身とか)があればそれでもOK。

 

まず、そういう簡単な質問をして、簡単に答えてもらう。それで「取材という特殊な状況ですが、私というライターは怖くないですよ~」という雰囲気をつくります。

 

それから徐々に、本題へ入る。そうするとちょっと難しい質問をしても、相手の緊張が少しは緩んでいるので、しゃべりやすくなっているはずです。

 

一見、どんなにしゃべり慣れているように見える人でも、「取材」って緊張するものです。

 

そういうことを、取材する側である私たちはいつも意識する必要がある。だからリラックスしてもらうことから始める。それが相手からいい言葉を引き出すコツだと、私は思います。