· 

久々に聞いた言葉「ルポルタージュ」

「僕はね、ルポルタージュが好きなんですよ」

ある日、なじみのワインバルで飲んでいたら、隣のおにいさんがそう言いました。

 

私がライターという仕事をしていると言ったら、そのおにいさんも本が好きらしく、自分が好きな本について話をしたかったようです。

 

おにいさんと言っても、年齢は私と同じ50代くらいだそうです。でも、パッと見ただけではとても若く、30代後半かな?と思ったほどでした。その「若く見えるおにいさん」から、ルポルタージュという言葉を聞いたので、私は「ん??」と思ったのです。

 

というのも、最近はあまり聞かない言葉だから。

 

なんだか、久しぶりに聞いたなぁ、と思ったので、改めて調べてみました。ネット上の複数の辞書などによれば・・・

 

「ルポルタージュ」はフランス語で「報道,報告」の意味(Reportage)。 または、自ら現地に赴いて取材した内容を放送、新聞、雑誌などの各種メディアでニュースとして報告すること。略してルポともいう。

 

この「ルポルタージュ」という言葉は、現在、ほとんど「ノンフィクション」という言葉になっていると思います。

 

「ノンフィクション」は事実に基づいた作品全般のこと。おそらく、ノンフィクションの方がルポルタージュよりも広い意味で使われていると思います。ノンフィクションに似た意味で「ドキュメンタリー」という言葉もありますが、これは「ドキュメンタリー映画」のように、映像作品に使われることが多いでしょう。 

 

「ルポルタージュ」を改めて調べてみて、意味はわかったけれど、なんとなく古い感じが否めない。ということで、私は自分が持っている本の中に、「ルポルタージュ」という言葉がないかと調べてみました。

 

古いノンフィクション作品といえば、有名なのが沢木耕太郎さんの「深夜特急」です。

 

これは、沢木さんが20代の頃に世界中を旅した時の体験談を書いたもので、まるでロードムービーのような作品です。ご自分の体験談ですから、まさにノンフィクションですよね。

 

「深夜特急」は1983年から出版された三部作なのだそうですから、かれこれ40年以上も前の作品。どこかに「ルポルタージュ」という言葉はないかと思いましたが・・・。

沢木さんの著者紹介の欄に「ルポライター」という言葉(写真の緑色のマーカー)がありました。ルポライターという言葉も、ルポルタージュと同様に、現在ではあまり聞かないなぁ・・・。

 

沢木さんの著者紹介では、最初こそ「ルポライター」という言葉が使われていますが、「ノンフィクション」という言葉(写真の水色のマーカー)の方がたくさん使われています。「ノンフィクション作品」や「ノンフィクション賞」「ノンフィクション分野」などです。やはり、日本を代表するノンフィクション作家ですね。

 

沢木耕太郎さんの著者紹介では「ノンフィクション」がたくさん使われていましたが、では、今回のブログのテーマである「ルポルタージュ」はないものか・・・。私はさらに、自分の本棚を探りました。

 

すると、あったんです。やはり、少し古い本でした。

 

それが、冒頭の写真「心療内科を訪ねて」です。

 

その裏表紙に、あらすじが書いてあります。その中に「ルポルタージュ」という言葉(写真のオレンジ色のマーカー)があるのです。

 

この作品は、2003年(平成15年)に出版され、その3年後の2006年に文庫化されたものです(私が入手したのは、2022年頃だったと思いますが)。

 

この本の著者はひどい腰痛に悩まされ、さまざまな治療法を試し、複数の病院にも行きましたが治らず、知人の紹介で心療内科に行って治ったことがきっかけで、この本を書きました。著者は、心療内科の患者さんを数人、丁寧に取材して、彼らがどのような症状で、原因は何だったのか、そしてどのように症状が改善していったのかを書いています。

 

ちなみに、なぜ私がこの本を買ったのかというと、著者が作家の夏樹静子さんだったから。

 

夏樹静子さんといえば、映画化やドラマ化された「Wの悲劇」など、サスペンス作品をたくさん書いた作家さんです。ルポルタージュやノンフィクションというイメージはありませんでした。

 

でも、ご自身の病気がきっかけで、こういう作品を書いていらしたんですね。

 

「ルポルタージュ」と紹介された夏樹静子さんの作品と、「ノンフィクション」という言葉で紹介されている沢木耕太郎さん。これらを比べてみて、私なりに「ルポルタージュ」と「ノンフィクション」の違いをまとめてみると・・・。

 

「ルポルタージュ」は、現場や当事者を取材し、あくまでも客観的な事実として、書いている。

「ノンフィクション」は、事実に基づくという意味では同じだが、より広い意味で、自分の思いなども交えて書いている。

 

今回のブログを書こうと思ってから、本屋さんに行き、ノンフィクションの棚をじっくり見てみました。今でも「ルポ 〇〇〇」というタイトルの本がありましたが、膨大な数の本がある中で、ほんの数冊でした。

 

「ルポルタージュ」は「ノンフィクション」に含まれているため、徐々に使われなくなっているのではないか、と思います。言葉は、時代とともに変わっていきますものね。